轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

このこをのこして

この子を残して

永井 隆

「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页

青空文庫

私はぐっとこの子を抱きしめたくなった。親犬と子犬とが遊ぶように、どこでも構わず、かみついたり、なめたり、たたき合ったり、ゆさぶったり、思い切り体と体とぶっつけ合って、時のたつのを忘れてみたい。そうしたらこの子はうれしさに息もつまり、笑いが重なって身もだえするであろう。脾臓が裂けるなら裂けてもいいじゃないか。この子がほんのひと時でも私から父の愛を受けて悦んでくれたら……。だが、私にはそれが許されない。一月でも、一日でも、一時間でも長く生きていて、この子の孤児となる時をさきに延ばさねばならぬ。一分でも一秒でも死期を遅らしていただいて、この子のさみしがる時期を縮めてやらねばならぬ。

胸の中に桜島の煙のように時々ぐぐっと噴き上がる愛情をおさえ、私はことさら冷たく子供を遠ざけておらねばならぬ。ぐっとおさえると、かえって大きくたぎって噴き上げる、まくらもとの火鉢の湯沸しの湯気にも似た骨肉の情である。もう一人の親――母がおりさえすれば、この子も父をあきらめて、その母にとりすがるのであろうに、その母は亡く、母のにおいの残った遺品もなく、面影をしのぶ写真さえ焼けてしまって一枚もない。