轻松读懂日语经典作品
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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
それで子供たちは主治医の朝長先生から「お父さんのそばへ寄ってはいけません!」と言いつけられているのだ。子供たちはこの言いつけをよく守り、そばへ寄りたい、じゃれつきたい、すがりつきたい、甘えたい想いをおさえ、いつも少し離れて私と話をする。私のほうも、世の常の父親のように、この子を抱き上げたり、ひっくり返して押さえつけたり、くすぐったり、キャッキャッ言わせて遊びたい。けれどもそんなふうにしている子供がいつしか慣れて、こちらがうっかり眠っている時などに、いきなりドンと飛びついたり、寝床のすぐ傍らでふざけ合って私の上に倒れかかって来ぬともかぎらない。それを防ぐために私は心をことさら冷たくして、寝床のまわりに本を積み、薬壜を並べて、愛情を隔てるバリケードを築いている。
「いってきまぁす」の挿絵
――カヤノが遊びから帰ってきて、私の眠っているのを見定め、こっそり近寄って、お父さんのにおいを求めたのは、こんなわけがあるからであった。
私も……わが子のにおいを久しぶりに味わった。白血病といえば、なんだか真っ白い血が冷たく流れているような気がするが、その私の血管の中に久しぶりに熱いものが流れ始めた。