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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
役所仕事といえば、そもそも収容所を作った目的はなんであったろうか? ――純粋に孤児の側に立って考え、孤児の真の幸福のみを目的として建てられたのは、いくらあるのだろうか? ちらりと耳に入る話では、孤児は社会悪の苗だから、早くひと所に取り入れておかないと、後日に禍根を残すおそれがある、との社会治安のために建てられたのがあるようだ。不良になっているにちがいないと、最初から教護院の職員出身者を収容所員として任用しているのがあり、鉄格子を窓にはめたのがあるようだ。また、つてを求めて職員を志願する者の中には、退職老朽教員や、病弱な者や生活力薄弱など、現代の激しい生存競争社会の敗北者とみとめられるのがあり、孤児に寄生して失業苦をまぬかれようとしているらしい。あるいは「少年の町」が時代の人気を得たのを見て、名を売るために始める企業家もないではない模様である。
そんな風評がまんざらうそでなかった証拠は次々にあらわれてきた。それをいちいちここに挙げたくはない。ただ一つ、島の収容所から逃げた子が海を泳いで渡る途中についにおぼれ死んだ事実を知ってもらえばよかろう。
命をかけてまでも逃げ出したくならせたのは、なんなのであろうか? 収容所でこんな目にあうよりは、たとえ死んでもいいから、この海を渡ってみようと、おさな心に決めて浜に