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さるすべり

さるすべり

山本 周五郎

「富士」大日本雄辯會講談社、1943(昭和18)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,095 字 · 24 页

青空文庫

ん、なれども若輩者のことでございますから、然るべき城代を上にいただき、わたくしはその手足となってはたらきとう存じます」

「申し分はもっともであるがこの場合はそのほういちにんにかぎるのだ、そのほうにすべての方寸をまかせるから受けい」

殿には殿のおぼしめしがあるのだと、景綱もそばから言葉を添えた、これよりまえ白石退城ときまって、さて誰をこの捨て城に残すかという相談になったとき、片倉景綱がすぐさま浜田治部介を推した。徳川本陣の軍令だから撤退に異存はなかったが、いちど攻め取った白石城をまるまる明けわたすのも意地がゆるさなかった。撤退の軍令にそむかず、しかも城をまもりたい、そういう微妙な立場にはまる人物はほかにない、治部介ならと景綱は信じて推したのである、政宗もかねて眼をつけていたのですぐにきまり、治部介がなんと云おうともう人選をあらためる意は少しもなかったのだ。治部介はようやく承知した。

「おめがねどおりお役がはたせますや否やわかりません、ただ身命の続くかぎりはたらきます」

「それでよい」政宗も景綱もほっとしたようすだった、「預かるについてなにか望みがあるか」