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ちいさこべ

ちいさこべ

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页

青空文庫

「おまえさんの云うことはわかったよ」と久兵衛が云った、「しかしね、こんなことも子供たちを此処へ置くから起こることなんで、お上のお指図どおりにすればいいんだから」

「旦那にうかがいますが」と茂次が久兵衛を遮って中島市蔵に話しかけた、「あの子供たちをうちでやしなうのは御法度ですか」

「法度ということはないが」と中島が答えた、「これまでに例もなし、十余人という子供をやしなうには、それだけの力と条件がそろわなければなるまい」

「条件とはどういう」

「居場所が充分にあるかどうか、衣食が不足なく賄えるかどうか、ちゃんとした躾ができるかどうかだ」

「うちは大工だから」と茂次が云った、「場所が狭ければ建て増しをします、衣食だって金持ちのようにはいかねえが、世間なみのことぐらいできるつもりです」

おりつはちらっと茂次を見、両の頬を赤くしながら、「世話はあたしがします」と云った。

「むりだ」と中島は首を振った、「十幾人もの子供たちに食わせて着せて、おまけに躾もしなければならない、おまえにはこのうちの仕事もあるんだろう」

「でも今日までずっとやって来たんですから」

「むりだ、そんなことがいつまで続けられるものではない、それはむりだ」