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ちいさこべ
ちいさこべ
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页
おりつのいる勝手と四帖半も少しひろげ、子供たちの部屋は十二帖にし、次に職人たちのために六帖を二つ、端の茂次の部屋も八帖にした。これがひとかわに横に並び、南側に縁側をとおした。大六と助二郎は「本普請にしたらどうか」とすすめたが、茂次はとりあわなかった。――すると、その建て増しを待ってでもいたように、じっ平にさそわれて逃げた子供のうち、富と広治という二人が戻って来た。富は九歳、広治は八歳で、二人とも乞食のような姿をしており、垢だらけで、虱がたかっていた。かれらは暗くなってから、空地に佇んでいるのをおりつにみつけられ、おりつがびっくりして呼びかけると、かれらはおりつにとびつき「ごめんなさい」と云って泣きだした。
「あたしわれ知らずぶっちゃったわ」とおりつは茂次にそう云った、「二人のお尻のところをぴしゃぴしゃって、――うれしいようなくやしいような、自分でもわけのわからない気持で、ただもうかっとなっちゃったのよ」
茂次は頷いた。
「わるいわね」とおりつがそっと茂次を見ながら云った、「また厄介者がふえちゃって」
「建て増しといてよかった」と茂次は云った、「当分たべ物に気をつけるんだな、飢えていた人間にいきなり腹いっぱい食わせると、躯をこわすっていうぜ」