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ちいさこべ

ちいさこべ

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页

青空文庫

三人は頭を垂れた。

「これこれの家を建てますと請負ったら、約定どおり家を建てて、普請ぬしに引渡すのが棟梁の仕事だ」と茂次は云った、「こっちが手詰りになったからといって途中であやまるなんてまねは、おやじは一遍だってやったこたあありゃあしねえ、おれはまだ若ぞうだがおやじの伜だ、べらぼうめ、このくらいのこって音をあげてたまるか」

そしてすぐに、「ついでだから云っておこう」と調子を変え、高輪やあべ川町、同業なかまから町内の義理づきあいを断ったのは、単にかた意地ではなく、みんなの厄介になりたくないためである、と云った。「大留」時代の古い関係をそのまま続けていれば、かれらは義理でも助力しなくてはなるまい。それはかれらにとっても軽い負担ではないだろうし、こっちにとっては一生の荷になる。他人の助力で立ち直るなどということは、死んだおやじもよろこぶまいし、自分たちだって恥ずかしい。つきあいを断わったのはこういうわけだから、覚えていてくれ、と茂次は云った。

三人は顔を見あわせた。かれらの顔はいま冷たい水で洗ったばかりのような、すがすがしい色をしており、藤造は微笑さえうかべていた。