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ちいさこべ

ちいさこべ

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页

青空文庫

という意味で、今年の秋あたりはそういうはこびになるだろう、というように聞いた、とおりつは云った。

茂次は躯のどこかに痛みでも起こったような顔つきで、じっとおりつの眼をみつめた。おりつは自分がへまなことを云ったとでも感じたのだろう、しりごみをするような調子で、「こんなことを云って悪かったかしら」と云った。

「ばかなやつだ」と茂次は静かに首を振った、「おれが福田屋で金を借りたことは事実だ、そのとき利息が付くよと断わられたのも事実だ、しかし利息というものは借りた金に対してこっちで払うもんだぜ、金を貸したうえに娘を利息につけるなんて、ばかな話があってたまるか」

「でもそこを、福田屋さんが洒落て」と云いかけたが、おりつは茂次の顔色を見て、慌てて口をつぐんだ。

「おい、よく聞け」と茂次がゆっくりと云った、「おれはうちの看板を質において金を借りた、福田屋は質屋だから、返すときには金に利息をつける、これ以上はっきりしたことがあるか、また、おゆうさんが片輪とかばかとかいうんならともかく、そうでもねえのに福田屋がそんな手の混んだまねをするわけがねえじゃねえか、そうだろう」