轻松读懂日语经典作品
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ちゃん
ちゃん
山本 周五郎
「週刊朝日別冊陽春特別読物号」朝日新聞社、1958(昭和33)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,377 字 · 45 页
「たん」とお芳が云った、「誰がぶつのよ」
重吉は喉の渇きを感じた。
「誰がたんをぶつのよ、たん」
「かあちゃんはどうした」
「おしえーないよ」とお芳はつんとした、「たんがおしえーないから、かあたんが問屋へいったことも、あたいおしえーないよ」
重吉は起き直った、「いい子だからな、芳ぼう、たんに水を一杯持って来てくれ」
「あたい、いい子じゃないもん」
重吉は溜息をつき、充血した、おもたげな眼でまわりを眺めやった。その六帖はごたごたして、うす汚なく、みじめにみえた。実際はお直がきれい好きで、部屋の中はきちんと片づいているのだ。初めから古物で買って、そのまま十五年以上も使っている箪笥や鼠いらず、長火鉢や鏡架に並んで、ふたの欠けた長持があり、その上に、女房のお直と娘のおつぎのする、内職の道具がのせてある。――
これらは障子にうつっている曇りの日の午後の、さびたような、少しも暖たかさのない薄光りをうけて、事実よりもずっとうす汚なく、わびしく、気の滅入るほどみじめにみえた。重吉は箪笥の上の仏壇を見あげた。作りつけの小さな仏壇で、塗りの剥げた扉は閉っていた。その中には親たちの位牌にまじって、長男の和吉の位牌もある。