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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

彼女は不審気に東屋氏を見た。

「では昨夜は、誰れと一緒にヨットへ乗られたんですか?」

「いいえ、キャプテンお独りだけでございました」

「何時頃出られたんです」

東屋氏は益々執拗だ。

「さあ、存じませんが……早川さんと私は、それぞれお先へ寝まして戴きましたので――」

「ではどうして、キャプテン独りで出られたのが判ったのです?」

「それは……」と彼女は明かに困った風で、「でも、ヨットは今朝、キャプテン独りだけで漂っていましたので」

東屋氏は一息つくと、改めて云った。

「キャプテンは、随分変った方でしたね?」

「ええ。風変りでいらっしゃいました。……そして、なんでも『これは儂の趣味じゃ』と被仰るのが口癖でございました」

やがて私達は、崖道を登り詰めた。

「物置のある別館と云うと、あれなんですね?」東屋氏は岬の最尖端の船室造りの建物に向って、歩きながら言葉を続けた。

「もう少し、私と話をして下さい」

「はい」

彼女は仕方なさそうについて来た。

「あの黒塚さんと云う方は、どう云う人ですか?」

「ああ黒塚様ですか」と彼女は幾分元気づいた様子で、「なんでもあの方は、以前キャプテンの乗っていらした汽船で事務長をなさっていらっしゃるとかで、休航毎にああしてお遊びに来られます」