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ひとでなし
ひとでなし
山本 周五郎
「講談倶楽部」1958(昭和33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,484 字 · 38 页
、あたしにもだんだんわかってきたんです」
おようはまたきれいに飲み、すぐに手酌で注いでから云った、「あの人は悪党だったわ、でも、なにをするにも本気だった、あたしをよろこばせることなんかごくたまにしかなかったけれど、そのときはみえも外聞も忘れて、ありったけの手をつくしてよろこばせてくれたわ、辛いめにあわせるときはもちろん、遠慮も会釈もありゃあしない、人によく思われようなんて考えはこれっぽっちもなく、自分のしたいことをしたいようにしたわ、そうよ、――あの人は悪党の人でなしよ、その代り自分も泥まみれになったわ、泥まみれ、傷だらけになって、そうして品川の海へ死骸になってあがったのよ」
「三年まえの夏でしたっけ」とおようは続けて云った、「品川でお仕着を着た死躰が二つあがって、石川島から牢ぬけをした二人だとわかり、すっかり腐っていたけれど、一人はあの人だったって、あなたが知らせて下すったでしょう、そのときあなたは、これでおまえの苦労も終った、これからは仕合せになることを考えようって、――あたしはほっとしたような顔をしたでしょう、ええおかげさまでと云って笑ったと思うわ、でもね、あなたが帰った