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ふるさとによするさんか
ふるさとに寄する讃歌
夢の総量は空気であった
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,184 字 · 13 页
街を燕が、そして私を、横切っていった。
街の埃と、街の騒音が、深く私に泌みていた。ただ孤り、しずかな杜に潜む時でも、皮膚に泌みた街の騒音が、私の身体をとりかこんでいた。砂山で、高くはれた夜の下にも、皮膚にうごめく雑沓の跫音をきいた。それは夜空へ散っていった。そして、発散する騒音と入れ換りに夜の静寂が、又ある時は磯の音が、さえざえと私に泌みた。何物か、私の中に澄み切ろうとする気配がしていた。夜空が、すべて宇宙が、甘い安心を私に与えた。
或る夜は又、この町に一つの、天主教寺院へ、雑沓の垢を棄てにいった。僧院の闇に、私の幼年のワルツがきこえた。影の中に影が、疑惑の波が、半ばねぶたげな夢を落した。ポプラアの強い香が目にしみた。さわがしく蛙声がわいた。神父はドイツの人だった。黒い法衣と、髭のあるその顔を、私は覚えていた。そのために、羅馬風十字架の姿を映す寂びれた池を、町の人々は異人池と呼んだ。池は、砂丘と、ポプラアの杜に囲まれていた。十歳の私は、そこで遊んでいた。ポプラアの杜に、あたまから秋がふけた、時雨が、けたたましく落葉をたたいて、走りすぎた。赤い夕陽が、雲の断れ間からのぞいた。