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へちまのき
へちまの木
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1966(昭和41)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,120 字 · 58 页
「口で云うぶんには、地面から天まで説明することができるさ」と房二郎が云った、「他人の火傷は痛かあねえというからな」
そして痛いことが起こった。その夕方、ちょび髭が記事部屋へはいって来て、木内桜谷と房二郎に小さな紙包みを渡し、明日から来なくていいと云った。
「これは僅かやけど、わいのこころざしや」と文華はちょび髭を撫でながら云った、「悪う思わんと取っといてや」
私の写し物はどうなるんです、と房二郎が云おうとしたとき、木内が机の前からとびあがるように坐り直し、ちょび髭に向かって幾たびもおじぎをした。
「西川先生このとおりです」と木内桜谷は云った、「それだけは待って下さい、私はこれまでもずいぶん書いてきたつもりですが、これからはもっと書きます、桜所さんや桜水さんのぶんも書きますし、わ印も月に二冊や三冊は書きます」木内はまたおじぎをした、「毎月の手当も減らしてもらっていいです、仰しゃることはなんでも致しますから」
およしなさい木内さん、と房二郎が云うまえに、ちょび髭がにたにた笑って、それはどこかよそへ持ち込むんだな、と云った。
「木内さん」と房二郎が呼びかけた。