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めおとちょう

めおと蝶

山本 周五郎

「講談倶楽部 春の臨時増刊号」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,977 字 · 47 页

青空文庫

初めのうちは客も多く、更けるまで密談をしたり、またこちらから夜になって出てゆき、夜半に帰ることなどもたびたびあった。それがやがてぱったりと絶え、客も来ず外出もしなくなると、眼に見えて気力が衰え、意気沈むという感じになった。

「――暗くなる、蒼茫と暗くなる」

こんな独り言を呟いたり、じっと壁を眺めながら溜息をついたりした。

藩主の大和守貞昭が帰国したのは二月下旬であった。そして数日して良平は召出しをうけ、そのまま家へ帰らなかった。妹の報告によると城中の牢へいれられたのだそうで、良平のほかにも原田市之丞という収納方や、郡奉行の川口大助、坂本数右衛門など、五六人の者が牢舎へはいったということだった。

裁きの内容は知りたくもなかった。上村の家は門を閉められて番士が附き、乳母と下女一人を残したほかは、家士も召使も暇を出した。ときおり裏から妹が来るだけである、それも内密の許しだから長くはいられない、話すことを話すとすぐに帰っていった。

「――お姉さまたいへんなお知らせよ」

或る日、文代が来て息をせいて云った。

「――知也さまが大目附に御就任なすったんですって、昨日お沙汰があったということよ」