轻松读懂日语经典作品
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めおとちょう
めおと蝶
山本 周五郎
「講談倶楽部 春の臨時増刊号」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,977 字 · 47 页
「それで、……なにがたいへんなの」
「――まあ、お姉さまにはこれがなんでもないの、知也さまが大目附よ」
信乃の頭のなかで、そのとき悲しげな呟きの声が聞えた。
――蒼茫と暗くなる。
文代が帰ってからも、その声は訴えるように、いつまでも頭のなかで呟いていた。その次の日のことであるが、なかば公然と知也が訪ねて来た。信乃は乳母を取次に出して、どうにも気分が悪いからと、会うのを断わった。彼は三日ばかりしてまた来たが、そのときも乳母を代りにやって、――良人の罪の定まるまでは誰にも会わない、ということを伝えさせた。知也はそれでこちらの気持を察したのだろう、
「こなたの御尽力で藩政改革にこぎつけることができた、この御恩は自分ひとりのものではなく、一藩の救いともいえる、母子お二人のことは必ずひきうけるから、体を大切に、気をしっかり持っていて貰いたい」
こういう意味の伝言をしていった。
良平から離別状が来たのは三月中旬のことであった。横目から役人が来、良平の遠い親族が三人寄って、家財の目録を作り、信乃の物はすべて別にした。……離別状は去年の十二月の日附であるが、それは良平に重科があったとき、信乃に累を及ぼさないための考慮で、良平の意志か、ほかに案を授けた者があるかは知るべくもなかった。