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やぶからし

やぶからし

山本 周五郎

「週刊朝日増刊」朝日新聞社、1959(昭和34)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,476 字 · 44 页

青空文庫

すべて自分のことが中心で、他の者のことは考えようとしない。自分の思うことがとおらないと、相手の気持など察しようともせず、暴れたり威したり、泣きおとそうとするだけであった。

――そうだ、あの方を立ち直らせることは誰にもできなかったにちがいない。

桃ノ木に桃ノ実がなるように、あの方にはあの方の実がなったのだ。誰が力を貸してあげたにしても、結局あの方は勘当放逐という断崖へ走っていったに相違ない。世間を知らない十六歳の新嫁が、それを救えたかもしれない、などと考えるのは僭上の沙汰である、とわたくしは思い返した。

おとうさまおかあさまが、どんなに落胆し悲しがられたかは、およそ推察することができた。それは、お二人がわたくしに済まながって劬り、慰め、力づけて下さるというかたちで、決してあの方のことを哀れがるようなそぶりはみせなかったけれど、その慰めや劬りの中に、あの方のことを悲しみ嘆いていらっしゃるようすが、いたいたしいほどよく感じられるのであった。

「あんな者の嫁に来てもらって悪かった」とおとうさまは仰しゃった、「おまえはまだ若いし、これからいくらでも仕合せになれる、この償いはきっとしてあげるからね」