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やぶからし
やぶからし
山本 周五郎
「週刊朝日増刊」朝日新聞社、1959(昭和34)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,476 字 · 44 页
「女め、女め」あの方は喘ぎながら叫んだ、「女がどんなけだものかおれは知ってるんだ、上品ぶったってごまかされるものか、きさまは女だ、自分でよく見てみろ」
あの方はわたくしの手をもぎ放して、寝衣の衿を左右へひろげた。ついで乱暴にしごきをひきほどき、突いたり殴ったりしながら、わたくしを裸にした。わたくしはさからわなかった。やはり眼はつむったままで、裸の膝に手を置いて坐っていた。外は雪だから、気温もさがっていたことだろうが、寒さも感じなかったし、恥ずかしいとも思わなかった。
「その胸を見ろ」とあの方は荒い息をつきながら、嘲笑するように云った、「その前を見てみろ、それが女だ、それが女の正体だ、きさまもほかの女と同じけだものなんだぞ」
あの方の眼が裸の全身を撫でまわすのが感じられた。それは実際に手で触られるような感じで、視線の当るところの肌に、つぎつぎと収斂が起こったほどであった。
「待っていろ」あの方は云った、「そのまま動かずに待っていろ、そのままでいるんだぞ」
よろめく足どりで、あの方は寝所を出ていった。
わたくしは眼をあいて、ぬがされた物を順に身に着け、しごきをしめた。