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マルクスしゅぎとゆいぶつろん

マルクス主義と唯物論

三木 清

「思想」1927(昭和2)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,739 字 · 43 页

青空文庫

それ故に私は進んで言葉が存在に及ぼすはたらきのうち最も注目すべきものに関して研究しよう。言葉はその具体性において社会的である。話すということは、或る人が、或る物について、或る人に対して話すという構造をもっている*。言葉のこの構造によって、語られた物は、語る私のものでもなく、聴く彼のものでもなく、誰という特定の人のものでなく、我々の共同のものになる。このとき存在を所有する者は「我々」であり、「世間」であり、範疇的なる意味における「ひと」(ドイツ語の”man“――フランス語の≪on≫)である。言葉の媒介を通じて初めて存在は十分なる意味で公共的となる。そして世界を相互いに公共的に所有することによってまた初めて社会は成立する。言葉が社会的であるというのは、言葉によって社会が存在するということである。アリストテレスも人間がロゴスをもっていることが彼の特に社会的なる存在である理由だと述べている**。しかるに存在が言葉によって表現されて社会的となり、「ひと」という範疇において成立する世界へ這入って来るとき、それはひとつの著しい性格を担うに到る。我々が存在の凡庸性もしくは中和性と名づけるものがそれである。