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おもいで

ロッパの悲食記

古川 緑波

古川緑波『ロッパの悲食記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:想い出、ああ東京は食い倒れ、浅草を食べる、色町洋食、うどんのお化け、甘話休題、牛鍋からすき焼へ、下司味礼賛、神戸、氷屋ぞめき、このたび大阪、清涼飲料、食べたり君よ、駄パンその他、八の字づくし、富士屋ホテル。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,651 字 · 114 页

青空文庫

それは、日本人の幸福とも言えた。

又、富士屋ホテルの美味地獄から、解放された悦びでもあった。

そして僕は、今年の三月十七日に、富士屋ホテルに一泊した。

着いたのが、夕方だったので、部屋に落ち着いて、バスに浴したりしている間に、もう八時近くになってしまった。

食堂は、八時半までで閉まる。グリルの方は、十時半頃まで開いているときいたので、それじゃあ、今夜は、グリルの方にしよう。八時半迄というんじゃあ、気が急くから、食堂の方はやめにして。と、連れにも、そう言って、ゆっくり構えた。

八時廻った頃に、部屋を出て、グリルの方へ歩いて行くと、ボーイが、「グリルでございますか。食堂へいらした方がサーヴィスが、よろしうございますが」と言った。

でも、気が急くからね、と、それを聞き流して、グリルへ行く。

グリルも、昔とは場所が変った。前は食堂の上の方の、小さな建物だったのが、今度は、場所が変って、ずっと大きくなっている。

そのグリルへ入った途端、これは殺風景だなあ、と驚いた。食堂の、落ち着いた感じと比べると、この方は、ひどくガサツだ、悪く言えば、ステーションの食堂へ入ったような感じなのだ。