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おもいで
ロッパの悲食記
古川 緑波
古川緑波『ロッパの悲食記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:想い出、ああ東京は食い倒れ、浅草を食べる、色町洋食、うどんのお化け、甘話休題、牛鍋からすき焼へ、下司味礼賛、神戸、氷屋ぞめき、このたび大阪、清涼飲料、食べたり君よ、駄パンその他、八の字づくし、富士屋ホテル。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,651 字 · 114 页
十銭二十銭の豪遊。
学校の往復に、ミルクホールへ寄るのも、楽しみだった。
僕は、早稲田中学なので、市電の早稲田終点の近くにあった、富士というミルクホールへ、殆んど毎日、何年間か通った。
ミルクホールは、喫茶店というものの殆んど無かった頃の、その喫茶店の役目を果した店で、その名の如く、牛乳を飲ませることに主力を注いでいたようだ。
熱い牛乳の、コップの表面に、皮が出来る――フウフウ吹きながら、官報を読む。
何ういうものか、ミルクホールに、官報は附き物だった。
ミルクホールの硝子器に入っているケーキは、シベリヤと称する、カステラの間に白い羊羹を挿んだ、三角型のもの。(黒い羊羹のもあった)エクリヤと呼ぶ、茶褐色の、南京豆の味のするもの。その茶褐色の上に、ポツポツと、赤く染めた砂糖の塊りが、三粒附いているのが、お定りだ。(だからシュウクリームにチョコレートを附けた、エクレールとは全然違う)
丁度同じ時代に、東京市内には、パンじゅう屋というものが、方々に出来た。
パンじゅうとは、パンと、まんじゅうを合わせたようなもので、パンのような軽い皮に包まれた餡入りの饅頭。