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ロマンスとえんだん

ロマンスと縁談

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页

青空文庫

「何故?」

「佐藤氏は中学時代の君をよく知っている。カンニングをした生徒に娘はくれないだろう」

と宮下君は平気で言った。ひどい奴だと思った。これが親友かと疑われるような態度だった。

「しかし僕は先生の訓戒に従って改心しているんだ。先生は宗教家だよ。懺悔によって罪障が消滅するということを知っている」

「そう理論通りには行くまい。若し先生にその意があるなら、もうソロ/\話がある筈だ。橘高さんと君子さんなら丁度好い釣合だと郁子も言っているんだから」

「僕は先生の印象が悪いのかね? 君の見たところでは」

「可もなく不可もないんだろう。全然問題にしていないようだから」

「君のお父さんに頼んで話して貰ったら何うだろう?」

「さあ」

「見込薄かい?」

「さあね」

「何うだい? ハッキリしろ」

と僕は癪に障った。こんな縁談の頼み方もあるまい。

「実は君、僕は困るんだ」

「何が困る?」

「君が絶対秘密を守ってくれるなら話す」

「守るよ。何だい?」

「実は僕は君子さんに申込んで肘鉄を食っているんだ」

「ふうむ? いつ?」

「この正月さ。君のロマンス主義にかぶれていた頃だった。正々堂々と手紙を渡したら、翌日、僕の帰るのを門のところで待っていて、『宮下さん、これは見ないでお返し致しますが、私、誰にも申しません。