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ロマンスとえんだん

ロマンスと縁談

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页

青空文庫

「そんな面倒なものないわ。もう定っているのよ」

「はゝあ」

「オホヽヽヽ」

「本当ですか?」

「えゝ。従兄よ。KOの医科を出て、助手を勤めながら論文を書いていますの。それが通り次第に」

「式を挙げるんですか?」

「えゝ」

「それはお芽出度いです」

「とても好い人よ。御紹介申上げましょうか?」

「いや、結構です。これは敵わない。ハッハヽヽ」

と僕は笑ってごまかした。これが第一回の見込違いだった。第二回も第三回もある。宮下君は失恋だと言うけれど、そんな根柢の深いものでない。単に不注意。ミステークだ。失恋でない証拠に手傷少々も負わない。

数ある若い同僚の中で、僕は宮下君と一番親しくしている。僕より二年後れて入って来て、大学も二年後輩だ。君は先輩だから面倒を見てやってくれ給えと課長から頼まれた。僕は机を並べて、聊か指導してやった。初めは「橘高さん、あなたは」と言って敬意を表したが、僕は「橘高君、君は」と言うようにならなければいけないと注文をつけた。今日ではその限度を越して、「橘高、お前は」なぞと言い兼ねない。それ丈け肝胆相照らしたのである。

「君、そう失恋ばかりしていないで、仲人を頼む方が早いぜ」