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ロマンスとえんだん

ロマンスと縁談

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,722 字 · 28 页

青空文庫

と宮下君がからかった。

「馬鹿を言うな。一世一代だ。ロマンスで行く。大海の鯛を釣る」

と言って、僕は意気軒昂たるものがあった。如何に同僚の多くが拙い女房につれそっているかを話して聞かせた。

「実は僕も時々縁談があるんだけれど」

「けれども何だ?」

「満を持して放たずさ。まだ早い」

「早いとも。慌てることはないよ」

「しかし僕は兎に角、両親が急ぐんだ。僕のところは至って世間並で、早く孫の顔を見たい組だから」

「ロマンス辞退か?」

「うむ。それが少し残念だけれども」

「又けれどもか? おい。もう話が進んでいるんだろう?」

「いや、まだだ。始まれば必ず報告して、君の勘弁を仮りる」

宮下君は僕のようなアパート住いと違って、東京に家がある。お父さんは官吏の古手だ。恩給がある上に、何処かに勤めている。しかし切りつめた生計だから、嫁を貰っても披露会なんかやれないと宮下君はそれを度々言うのだった。昨今のことだから、皆内輪にやっている。

「新婚旅行もやらない」

と言う。

「おかしいぞ。君はこの頃そんな話ばかりしている」

果して僕の推察の通りだった。或日、宮下君は、

「君、報告がある。屋上々々」