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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

どう考えても、そこに子供人形のあるはずがなかった。変だぞと思うと無上に怖くなって来た。

「オイ、スイッチをひねるんだ。あの上のシャンデリヤをつけて御覧」

若い番頭は、ワッといって逃げ出したいのをやっと踏止って少年店員をせき立てた。

少年店員は、スイッチを押しに行ったけれど、面喰っている為に、急にはそのありかが分らない。番頭はもどかしがって、少年の手から懐中電燈を奪って、それを怪しい人形にさし向けながら近づいて行った。

長い陳列台を一つ廻ると、一寸空地が出来ていて、その真中に三人の人形が立っていた。懐中電燈の丸い光が、おずおず震えながら、床をはい上って行った。人形の周囲にめぐらした鉄柵、人造の芝生、お松さんの足、お梅さんの足、お竹さんの足、と次々に円光の中に入って行った。

そこで丸い光は暫く躊躇していた。事実を確めるのが怖いといった風に戦いていた。が突然思い切って、空を切って、光が飛んで、パッタリ動かなくなった箇所には、世にも不思議なものの姿がクローズ・アップに映し出されていた。

その者は鳥打帽を冠り、何か黒いものを着て、さっき少年店員がいった通り、一寸すまし返ってお松お竹の両婦人に手を引かれていた。