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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
だが、一見してそれは子供でないことが分った。大きな顔に大きな目鼻がついて、頬の辺に太い皺が刻まれていた。俗にいう一寸法師だった。大人の癖に子供の脊丈しかなかった。それが懐中電燈の円光の中に、胸から上を大写しにして、私は人形ですという顔をして活人画の様にまたたきさえしないでいるのだ。
昼間、太陽の光でそれを見たなら、美しい生人形と畸形児との取合せが余り変なので、だれでも大笑いをしたことであろう。だが夜、懐中電燈のおぼろげな円光の中に浮び上った畸形児のすました顔は、すましているだけに一層気違いめいて、物すごく感じられた。
「オイ、そこにいるのはたれだ」
若い番頭は思い切って怒鳴りつけた。
しかし相手は答えなかった。答えの代りに丸い光の中の半身像が、丁度活動写真のフィルムが切れでもした様に、突然見えなくなった。つまり相手は逃げたのだった。
少年店員がやっとのことで、スイッチを探し当てて、一時にその辺が明るくなった。だがその時分には、畸形児は鉄柵を越え、陳列台の間を通り抜けて、どこかへ見えなくなっていた。無数の陳列台が縦横様々に置き並べてある、その間を台より低い、一寸法師が逃げて行くのでは、まるで追駈け様がなかった。