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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

それに、明智さんを頼んでしまったのですもの。あの人は恐しい人です。底の底まで見通している様な気がします。あなたは、それならそれで、なぜもっと早くいってくれなかったのです。せめて明智さんなんか頼まない先に」

「明智ですって、フフン」不思議な男は鼻の先で笑った。「あの男がどうしたというのです。何も恐れることなんかありませんよ。こんなことになったのもあなたが悪いのだ。僕を見くびって、たかをくくっていたのが悪いのだ。口ばかりではあなたが驚かないから、実行する外なかったのだ。今になって泣き言をいったって何になるものか。だが、決して絶望することはありませんよ。凡ての秘密は僕が握っているのだ。三千子さんが殺されたことが分った所で、だれが殺したんだか、死骸がどこにあるのだか、警察にしろ、素人探偵にしろ、だれがどんなに探したって分りっこはありません。だから少しも心配することなんかありゃしない」

お雪は出来るだけ二人に接近して、句碑の蔭から彼等の密話を聞こうとした。彼女は怖い事よりも妙な好奇心と一種の正義の感情で一杯になっていた。それに日ごろから彼女とは人種でも違う様に畏敬していた百合枝夫人のこの犯罪じみた奇怪な行動が、彼女を不思議に興奮させた。