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なのかななよ

七日七夜

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1951(昭和26)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,818 字 · 36 页

青空文庫

雪にでもなりそうな、曇った寒い朝である。酔ってはいるが相当に空腹で、しかしもう飯を喰べにはいる勇気はなかった。

「――ひでえもんだ、ひでえやつらだ」

昌平は徹底的に剥かれた。懐中にはなさけないほどの小銭しか無いことがわかっている、新吉原ほど辛辣ではなかったが、かれらも昌平を容赦なく搾った。ぶっつけに、あけすけに、悪罵と暴力で搾りあげた。

「――はは、このひょうたくれか、まったくだ、いいざまさ」

彼は寒い街をあてどもなく歩いた。

新吉原の遊女の、嬌めかしくあまい、胸のどきどきするような囁やき、柔らかく凭れかかった肩、情をこめた抓りかた。それがすべてみせかけであり、ごまかしであり、そのうえ些かも恥ずるけしきなしに、堂々と、自からその正体をあらわした。

岡場所でも同様であった。金を奪取するまでは好意的である。哀願的でさえある。殴りつけたり突き倒したりするのは、彼女たちの礼儀らしいが、ともかくいちおう嬉しいような気持にさせる。だがひとたび金の授受が済むが否や、たちまち仮面をぬぎ、酷薄無情の正体をあらわす。女はもちろん、いまこころづけを貰った男や婆さんまでが、くるりと鬼のように変貌するのであった。