轻松读懂日语经典作品
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さんねんめ
三年目
山本 周五郎
「雄弁」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,214 字 · 22 页
「蓬莱橋が渡れたってさ、おまえさん、早くその荷物を持って出ておいでよ」
そういう声に入り交って、ざぶざぶと水の中を歩く音が聞えた。どうやら膝あたりまで浸かってきたらしい。鋭い赤子の泣声が起り、どこかで犬が悲しげに吠えた。
友吉は台所へ行ってみた、酔いが醒めそうで、なんとも云いようのない、酸っぱい悲しさと、怒りと、口惜しさが胸を緊めつける、……隅のほうに一升徳利があるのをみつけた、振ってみると半分がた残っていた。それを提げて六畳へ戻ると、いきなり徳利へ口を付けて呷った。
「角さん、角さん」
二三軒先から誰かが呼んだ。
「いねえのかい角さん。おかみさん、……もう駄目だぜ、いまのうちに逃げねえと手後れになるぜ。……おかしいな、いねえのかな」
「角さん、お菊さんたら」
女の声も聞えた。
友吉はひょいと冷笑した、それからまた酒を呷りつけた。味もなにも分らない、ただ喉をごくごくと冷たく落ちてゆくのが快かった。……路地内の騒ぎはいつか遠のいていた、ただどこかで人の呼び交わす切迫した声だけが、刻々に近づきつつある大きな危険を感じさせた。
徳利がほとんど空になりかかったとき、友吉はひょいと聞耳を立てた。