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さんねんめ
三年目
山本 周五郎
「雄弁」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,214 字 · 22 页
友吉は二三杯呷りつけた。……びしょびしょと小歇みもなく降る雨の音が、ささくれだった神経にいらいらと響く。
「二人はどこにいますって?」
友吉が突掛るように訊いた。
「よくは知らねえが深川のほうで見かけた者があるってえ話だ、さすがに大川のこっちにゃ住めなかったんだろう、……自然うちの建場にゃあ角は来ねえから」
「若棟梁、酔ってもようござんすか」
「よかったらどこかへ繰込もう」
「いえそれには及びません」
友吉の眼は粘るような光を帯びていた。
茅場町の山崎屋という宿の二階で、友吉はその翌る朝を迎えた。……仁太郎は自分の家へ草鞋を脱げと勧めた。そうすれば堀一家の兄哥分として今後の面倒をみようと云う、だが友吉は断って別れた、先のことなんかどうなろうとかまわない気持だった。
久しく呑まなかったところへ深酒で、頭の芯が割れるように痛かった。運ばれた飯には手をつける気もなく、窓からぼんやり、今日も降り続く雨の街を見ていると、やはり考えは一つことに落ちていった。
――そんなはずあねえ。
いくら考えても信じられなかった、信じられない後から、しかし疑いは執念く湧きあがってくる、次から次へと色々な場面が空想される、それはまったく身の震える空想だった。