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ふしょうのあに

不肖の兄

豊島 与志雄

「改造」1925(大正14)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,889 字 · 39 页

青空文庫

だけど、昨晩のような、嘘だか本当だか分らない、まるで酔払いの寝言みたいんじゃあ、取り上げるわけにはいきませんからね。」

そんな風に云われると、僕はもう参ってしまった。母の気持は変に真剣に動いていた。初め僕は、兄との喧嘩の方ばかりを気にしていたが、母はそんなことはけろりと忘れたかのように、浜地のことばかりを、真面目に考えてるらしかった。

僕は頭をこつこつ叩きながら云った。

「酔払ってたんですよ、昨晩は……。何だかでたらめに饒舌ってるうちになお酔払ってきて……。」そこで僕はちゃんと坐り直した。「いえ、賛成です。浜地と敏子との話には大賛成ですよ。」

「だって、お前は昨晩、何と云いました。」

「さあ、何といったか……だがもういいんです。僕は良縁だと思っています。」

そうした僕の云い方が、母をなお不安にならしたらしい。母は何かを見窮めようとするような眼付で、僕の顔をなおまじまじと見入ってきた。

そのため、僕は碌に酒も喉に通らなかった。

敏子

僕はお前と浜地との結婚に反対じゃなかった。どちらかと云えば賛成の方だった。ひどく冷淡な云い方だけれど、それ以上は僕には云えない。