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よのなかへでるこどもたち

世の中へ出る子供たち

小川 未明

「婦人朝日」1939(昭和14)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,905 字 · 8 页

青空文庫

頭の中では、うまくいかなかったのです。

「ああ、やはりサイダー二本がつけ落ちになっている。これは、あの少女の損になるのだろうか。」

正吉が、食べ物や飲み物を運んできた、目の星のように清らかな、白いエプロンをかけた少女の姿を思い浮かべました。彼は急いで街へひきかえしました。そして、時計を見ると、もう十時を過ぎています。

「いつのまに、こんなに早く時間がたったろう。」と、つぶやきながら、例のレストランの前へくると、もう店は閉まっていました。なにか仕事があって、一人おくれたのか、普通の娘さんのようなふうをした丸顔の少女が、横の入り口から、出たのでありました。正吉は、その少女を呼び止めた。

「すこし会計が、ちがっていたのですが。」と、いいました。

「私にはわかりませんが、なにか余計にいただいたのでしょうか。」と、少女が聞きました。

「いや、サイダー二本の、つけ落としがあったと思うのです。」

こういうと、彼女は、正直な人だと思ったらしく、軽やかに笑いました。

「こちらの手落ちなんですから、かまいませんよ。」といいました。

「受け持ちの女給さんに、損をかけまいと思ってきたのです。