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アラスカのひょうが

中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河』。同一底本的分册已合并为一书。收入:アラスカの氷河、永久凍土地帯、黒い月の世界、白い月の世界、満洲通信、アメリカの旅、アラスカ通信、ウィネッカの秋、ウィネッカの冬、ツンドラへの旅、ネバダ通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 122,039 字 · 248 页

青空文庫

すっかり人跡から離れたと思うころ、小高いところに立派な建物がたくさん見えてきた。それがアラスカ大学なのである。

たくさんある建物の中で、いい加減なところにタクシーをつけさせて、学生らしい男にきいてみたら、運よくそれが地球物理学教室であった。「誰に会いにきたのか」ときくから「誰でもいい、雪や氷に興味をもっていそうなプロフェッサーのところへ案内してくれ」と頼んだ。学生は頭をかしげながら「一体貴方はどこからきたのか」ときく。「日本からきた」「いつきたか」「今日きた」「この大学で誰れも知らないのか」「知らない」。問答の末それでは主任教授のところへ行くより仕方ないだろうなということになって、連れて行ってくれた。会ってみたらそれはイオン層の権威であるシートン教授であった。ちょっと意外な邂逅である。会うのはもちろん初めてであるが、名前は互いに知っていた人である。それに今度アメリカの気象学会で、『気象学要綱』を出すことになっていて、シートン教授も私も、その執筆者の中にはいっている。いわば同僚であった。こちらも驚いたが、先方の方がよほど驚いたようであった。「あなたがこんなところにいようとは思わなかった」