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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
俗物源十郎の妄執、炎火と燃えたってついにお艶におよばないではおかないのであろうか?
邸前の野に、雲に入るひばりの声……。
それも、買わんかな、売らんかなの両人の耳には入らぬらしく、源十郎、したり顔に膝を進めてつと声をおとした。
「サ! おさよ殿、これなる五十両を受け取って、約束どおりに栄三郎から三行半を取って来てもらいたい。いかがでござる?――よもや嫌とは……」
「いやだなどとめっそうもない! それではお殿様、はい、この五十両はわたくしがお預り申して」
と何も知らないおさよは、眼を射る小判の色に眩惑されて、一枚二枚と小声で数えながら金を拾いあげはじめたが! その一つ一つに、出羽様の極印で、丸にワの字が小さく押してあるのには、おさよはもとより、よく検ためもしなかったので、源十郎じしんさえすこしも気がつかなかった。
血のにじんだ小判!
大工伊兵衛の死相をうかべた金面!
それが一つずつ老婆の貪欲の手に握りあげられてゆくとき、左膳と月輪の雑居した離室に、どッ! と雪崩のような笑い声が湧いて消えた。
この室内のしじまにチロチロと金の触れるひびき……。
怨霊を宿した金子に手をふれておさよの皮膚は焼けただれたか……というに、べつにそうしたこともなく、丸にワの字の出羽様の極印も両人とも知らぬが仏で、世のつねの小判のように