轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かずえはいそがしい
主計は忙しい
山本 周五郎
「奇譚」1940(昭和15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,315 字 · 37 页
「こんなところへまいって失礼ですけれど、お部屋ではいつもお人がいらっしゃいますので」折江はこう云って彼の眼を見た、「――それにもう、ずいぶん日も経っておりますから、どうなすったかと思いまして」
「と仰しゃると、――ああそうですか、節句のお支度のことですね」
「いいえ、いつかお話し下すったあの、――あのことでございますわ」
「わかりました、妹の琴をお譲りする話でしょう」主計はにこりと笑う、「――大丈夫ですよ、まだ話してはありませんがあいつ嫁にゆくんですから。琴を三面も持って嫁にゆけやしません、必ずお譲りするようにしますから安心していらっしゃい」
「わたくし琴のことなど申上げてはおりませんわ」
「琴でもない」主計は狼狽する、「――と云うといったい、……ああ、ああわかった、あれですね、あの古竜堂で持って来た茶壺」
そのとき向うで弥一郎が呼びたてた。
「牧野先生お客ですよ」
「よし、いまゆく」
「わたくし明後日から松乃をつれて江の島へまいります」折江は口早にこう云った、「――往き帰り十日はかかると存じますから、そのあいだに話をおきめになって下さいまし、こんどこそお願い致します」