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こじきがくせい

乞食学生

太宰 治

「若草」1940(昭和15)年7~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,682 字 · 68 页

青空文庫

数学は、あまり得意じゃないんだ。怪談が、一ばん好きだ。でもね、おばけの出方には、十三とおりしか無いんだ。待てよ、提燈ヒュウのモシモシがあるから、十四種類だ。つまらないよ。」

わけの判らぬような事を、次から次と言いつづけるのであるが私は一切之を黙殺した。聞えない振りをして森を通り抜け、石段を降り、弁天様の境内を横切り、動物園の前を通って池に出た。池をめぐって半町ほど歩けば目的の茶店である。私は残忍な気持で、ほくそ笑んだ。さっきこの少年が、なあんだ遊びたがっていやがる、と言ったけれど、私の心の奥底には、たしかにそんな軽はずみな虫も動いていたようである。それから、もう一つ。次の時代の少年心理を、さぐってみたいという、けちな作家意識も、たしかに働いて、自分から進んでこの少年に近づいていったところもあったのである。ばかな事をしたものだ。おかげで私はそれから、不幸、戦慄、醜態の連続の憂目を見なければならなくなったのである。

茶店に到着して、すなわち床几にあぐらをかいて、静かに池の面に視線を放ち、これでよし、と再び残忍な気持でほくそ笑んだところ迄は上出来であったが、それからが、いけなかった。