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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
流氷の多寡、その分布状態、特に春になってからのその消失の遅速が、確かに夏の天候を支配することが分ったのである。この数年来、やっと見当がついて、予報を出してみたが、皆よく適中しているという話であった。不思議なことは、根岸氏のこの予報を利用している農業指導者が非常に少い、というよりほとんど無いことである。稀れにあってもそれは例外のことで、実際にはほとんど利用されていないようである。今年のように冷害が立派に予知されていた年に、北海道で専ら晩稲の種子のみを配布して、ほとんど皆無作に終った所もあるというような極端な例さえある。官庁や農業会では、供出の方にばかり気をとられて、肝心の獲る方を忘れていたのかもしれない。もっともそれは冗談で、ほんとうのところは、我が国の朝野を通じて瀰漫している学問軽視の風潮の一つの現われに過ぎないのであろう。科学尊重という言葉は流行っているが、ほんの付け焼刃にすぎない。
小さい旋盤だのボール盤だのを自分で持って、部分品を自分で作り、調整も自分でして、やっと飛べるようにする。そういう危かしい飛行機でオホーツク海上の雪空を十年間飛び続けたこの研究も、結局誰にも用いられず、今年の冬からは中絶されることになるであろう。