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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
」
「『一体そんなに拾つて、どうしようと云ふのだ』と聞くと、面白さうに笑ひながら、『だつて拾ふのが面白いぢやありませんか』と云ふ。ハンカチに一杯拾つて包んで大事さうに縛つて居るから、もう止すかと思ふと、今度は『あなたのハンカチも貸して頂戴』と云ふ。とう/\余のハンカチにも何合かの団栗を充たして『もう止してよ、帰りませう』と何処迄もいゝ気な事を云ふ。」
二月二十一日、いよいよ明日はこの家を畳んで、先生は下宿へ移り、奥さんと美代は親戚の家で一泊して、帰郷の途につくことにきまる。「下宿へ荷物を送る。医師、家主其他へ払ひ、此家も今宵限りなりと思へば流石になつかし」先生にはこの西片町の家が気に入っていたので、特にその感が深かったのであろう。
先生は高等学校時代に結婚されたが、奥さんは家に残したまま熊本で学生生活を送り、東京の大学へ入っても、初めは一人で下宿をして居られた。軍人堅気一方の父君が、一人息子の身のことを案じられたためであろう。初めは親戚にあたる銀座の商店にあずけられ、後に谷中の古い汚い寺の一室に移られた。二年生になって、奥さんが出て来られてからも、逢初町の汚い小路の離れを借りたり、仲御徒町の金貸しのばあさんの離れに移ったりされた。