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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
不可能であるような感情がある。あるというよりも、実際に生きている人間の精神作用は、そういう種類のものが大部分で、科学や論理学の手に負えるものは、極く小部分なのである。それで「負傷では物足りません」というような世界にも、詩の広い分野があることになるのであろう。
長者雖有問
役夫敢伸恨
の十字だの
遺廟丹青落
空山草木長
の一句だのを、分析と組立、即ち説明で片をつけようと思ったら、たいへんな騒ぎになるであろう。十枚や二十枚ですむ話ではない。何百枚の説明をしても、本統のところは結局伝えられないであろう。詩でなくては表現が出来ないのである。
こういう考え方は、科学者としての詩の見方、というよりも私の我流の詩の見方であって、専門家の眼には苦笑ものかもしれない。よく田舎の役場などにつとめている人に、科学の熱心家があって、大原理を発見して意見を求められて返答に困ることがある。どうもあれに似たようなところがありそうである。しかしここまで書いた以上、何か詩人への註文を付け加えておかないわけにも行かない。
それで註文というのは、どの詩にも一つのテーマが欲しいということである。そのテーマは、何でもよいのであるが、とにかく科学や広い意味での論理の以前にあるものを、一つの詩に必ず一つは呈示して欲しいのである。