轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

「新小説」1920(大正9)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,102 字 · 104 页

青空文庫

一番悪い状態だ。僕にはどうしていいか分らない。二つの石塊のように、触れ合うことが互に傷つけ合うことになるのは、実際堪らない。」

「余りいろんなことを考えすぎなさるからいけないんですわ。」

その言葉は、啓介が求めている所から最も遠いものであった。彼は、俯向いている信子の顔を、じっと眺めた。彼女はかすかに身を震わした。

「なるほどお前の云いそうな言葉だ。お前はいつも頭で物を云って、心で物を云ったことがない。」

信子は黙って、益々低く頭を垂れていた。視線を膝の上に落して、肩をすぼめながら両手をきちんと重ねていた。その審問をでも受けてるような様子を見ると、啓介はたまらなく淋しくなった。彼はいきなり上半身を起そうとした。信子は驚いて彼を引止めた。彼が再び枕に頭を落付けると、彼女は彼の手に取り縋って、涙を流した。

「あなた、許して下さい。」と彼女は口の中で云った。

然しその意味は彼には分らなかった。

「何もあやまることはない。僕達は互に触れ合う面が悪いんだ。」

彼も涙ぐんでいた。その涙を流すまいとして眼をつぶった。二人共黙り込んでしまった。彼がそっと身体を動かすと、彼女は蒲団の中に手を差入れて、彼の腕をさすり初めた。