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びぜんめいきゅうでん

備前名弓伝

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页

青空文庫

……同役たちもしきりに喜びを述べる。

「よき甥御を持たれてお仕合せでござるな」「三之丞どのなくば殿の御面目も潰れるところ、家中われらまで他藩からわらわれなければならぬ、お蔭で肩身が広うござる」「さすがは三左どののお仕込みだけあって、あれだけの腕を今日までおくびにも出さなかったところは奥ゆかしゅうござるな」

あっちでもこっちでも褒められる、根が明けっぴろげの老人だから、自分でも嬉しさを隠すのに骨が折れる。

「そう褒められては御挨拶に困る。あれに就いては拙者もかねがね見どころのある奴とは思っておったが。や、なにしろまだ若輩でな。まだまだ御奉公はこれからでござるよ」などと云っていたが、日を定めて心祝いをするからと、昵懇の者を数人、招待する約束をして下城した。

さてその当日。三左衛門の家へ招かれてきたのは、老臣山内権左衛門、伊木長門、それから宮田兵庫、粕谷市郎兵衛、富永治左衛門、若手では碇田彦八郎、桜井孫三郎、滝川幸之進、以上八名である。……伊木長門というのは気骨のある人物で、あるとき光政の意に触れることがあって閉門を命ぜられた。ところが間もなく光政は参覲のため江戸へ出立することになり、その日が来ると、長門は急に月代を剃り衣服を更え、門を開いて外へ出た。