轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
へいほうしゃ
兵法者
山本 周五郎
「新武道」1944(昭和19)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,184 字 · 16 页
三
翌日もまたかれは庭へ扈従を命ぜられた。そしてその次の日も、さらにまた次の日も、光圀はしきりにかれを庭へつれ出した。そういうことが四五日つづいた或る日、いつものように泉池の架け橋へさしかかると、もう少しで渡りきろうとしたとき、光圀はとつぜんまたかれをだっと突きのめした、兵法者なにがしは躰を捻るようにみえたが、そのまま横さまに池の中へ転落した。……光圀はかれのあがって来るのを待って「そのほうは水へ落ちるのが巧者だな」と云った。なにがしはずぶ濡れのままそこへ手をついて、「おそれながらお上の左のお袖をごらん下さるよう」と云った。
三
云われるとおり左の袖をみると、袂の端に小柄が縫い込んであった。突きおとされる刹那のはやわざである、……光圀はそれを抜き取ると、かれの眼の前へ投げだしながらきびしいこわねで云った、「たしかにそのほうの性根をみた、いとまを遣わす、もはや主従ではないぞ」そしてあっと眼をみはっているかれをうしろにさっさとそこをたち去ってしまった。……この始末をひそかに見ていた者がある、それは三木幾之丞だった、かれは御しゅくん守護の意味で、どんな場合にもかならずみえがくれにあとをつけていたが、そのため橋の上の出来事を二度とも仔細に見た。