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へいほうしゃ
兵法者
山本 周五郎
「新武道」1944(昭和19)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,184 字 · 16 页
だがいま眼前に見た二度めの思いがけぬ結末は、かれにはどうにも理解することのできないものだった、――なんのための御勘当だろう、なにが御不興をまねいたのか。御殿のほうへ去ってゆく光圀のあとを追いながら、幾之丞はあれこれと考えめぐらしてみたが、どうしてもはっきりうなずくことができなかった。
一刻ほど経って幾之丞は光圀に召された。兵法者なにがしの住居へいってかれのようすを見て来いという申付けだった。幾之丞はすぐに立っていった。かなり手間どって戻った報告によると、――なにがしはすでに家の始末をしてたち退いた、ということだった、「浜街道をとってたち退くのをみとめたと申す者がございました……」「よび返してまいれ」光圀はさっと色を変えながら云った。絶えてみたことのないきびしい調子だった。「助三郎と久左をつれてゆけ」「はっ」と幾之丞は御前をさがり、佐佐助三郎、中野久左衛門の二人に旨を伝え、馬をそろえて城を出ていった。浜街道を疾駆していったかれらは、城下から三里ほど南に当る小さな村はずれで兵法者に追いついた。馬蹄の音を聞きつけたなにがしはふり返って三人を認めると、笠をぬいで道の傍らに立停った、まっさきに乗りつけた幾之丞が、馬をおりて光圀の命を伝えた。