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ふゆがれ

冬枯れ

徳永 直

「中央公論」1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页

青空文庫

どっかで演習でもあるのか、朝からひっきりなしに兵隊が、県道筋を百姓部落のある方へ通っていった。みんな頭から緑と黄のだんだん染の網を冠って、二人、三人ずつで機関銃をかついでいた。背嚢、弾薬帯、短剣、小銃、黄色い鉄帽、その他鷲尾が知らぬようなものを背嚢わきにくくりつけていて、近頃の歩兵は歩くだけでも大変だと思われるほどだった。

腰から下は濛々と舞いあがる埃にかくして、歩兵の一群が過ぎると、間もなく輜重兵の隊列が、重い弾薬車の軌りで町並の家々をゆすぶりながら通った。馬は湯気の様な息を吐き、兵隊達はもう水を浴びたように汗に濡れている。激しい怒声がきこえて、そく足の伝令騎が泡を噛んで一散に駈けすぎる。……

そンなとき鷲尾は思わず呼吸をつめていた。威迫されるような光景に、吾れ知らず懐中の赤ン坊を抱きしめているのである。――

白い埃の渦がしだいに遠のき、だいぶおくれて、指揮官らしい三四人の……が、しずかに馬の上で揺れながら、笑い声をひびかして通りすぎると、いままで軒先や、道傍に避けていた荷馬車や、百姓達がホッとしたようにうごき出した。

「あれは何だい?」

うしろの団子焼の釜の上から首を出している妹に、鷲尾は訊いた。