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ふゆがれ
冬枯れ
徳永 直
「中央公論」1934(昭和9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页
と行きすぎてしまう。――
「吝ン坊の土ン百姓共が、正月餅があるうちァ寄りつきもせん――」
そんなとき彼女の口惜しそうな毒口は、いまに涙でも出るかと思うほどだった。
鷲尾はわざわざ旅費を工面して帰ってこなければよかったと後悔していた。目的の一つというのは、死にめにも逢えなかった母親の一周忌と、残っている老父を妹夫婦に頼むことや、いろいろ貧乏長男としての後始末なぞであったが、どうせ自分の経済的無力さでは円滑にゆく道理もなかったので、矢張り手紙でおしつけておいた方が怜悧だったという気がしていた。
帰ったすぐその晩、父親を真ン中にしてみんなで酒を呑んだときにも、妹はもうそれとなく予防線を張って、事こまかに家計をならべあげた。大工である妹の亭主が手弁当で日給一円、鷲尾の末弟の虎吉が熊本市の郊外電車の少年車掌で日給七拾銭、末の妹と父親の内職が三十銭足らず、それに店の売上げが月々の地代金にやっとだという。
「一家五人がみんなガマ(働く)だしとりますばい、これでああた虎吉が来年は徴兵におっとられたらどぎゃンしまッしゅか※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「成程、成程……」