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こごえるおんな

凍える女

小川 未明

「三田文學」1912(明治45)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,949 字 · 20 页

青空文庫

が、忽ち怪しまれた。ちょうど女の後方となって、ランプの光りはよくこの蔭までは、明るく見せなかった。

「寒かったろう……はやくおろしてやんなさい……。」

といって、爺は、ちょっと子供の頬に指を触れて見た。而して、驚いて、声を立てんばかりに後退りをして、眼を見張った。

「奥さん……。」といって、その後も言わず、老婆に向って、

「早く燈火を持って来い。」……

二人は、ランプを、眠っている乳飲児の顔の上に差し出した。顔の色は、青白くなって、雪がかかっていて解けなかった。二人は、黙って互に顔を見合った。いつの間にか子供は、寒気のために、凍え死んでいたのである。

この時、女は、頭髪を乱して、幽霊のように土間に立ったまま物も言わずぶるぶると慄えている。頬は削り落したように窶れて、青晒めて、眼ばかり、怪しく、狂わしく、気味悪く、眤と坐ってランプの火影を見詰めていた。