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こごえるおんな

凍える女

小川 未明

「三田文學」1912(明治45)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,949 字 · 20 页

青空文庫

こうして、今では柿村屋には、町からも、また近村からも、この村の者でも、人に知れぬように集って博打をした。柿村屋は決して是等の人に対しても、親分らしい顔をしたことがなかった。いつも苦み走った顔でじろりと集った人の顔を見廻わして考え深いような眼付に、折々、底意味の知れない笑いをたたえた。

おあいは、やはりこの柿村屋へ来るようになってから家を失して落ぶれてしまった一人である。

おあいの亭主というのは、人の好い、女房のいうなりになっている男であったが、時々気に向かぬことがあると癇癪を立て、怒鳴ったり、器物を投げ付けて壊したりしたが、直に、おとなしくなって言うなりになるような意気地のない男であった。従って、自分は働きというものがなかった。村では、この男を仏のようだといったものもあった。

おあいには子供が三人ある。亭主がこういうような風で、常に貧乏をしていた。亭主は村役場の小使に雇われたり、近隣の醤油問屋の帳付などに雇われたりしたが三月と同じところに勤めたことがない。これは、一つはこういう男の癖として厭き性であったからである。直ぐおあいの隣りには、おあいの叔母にあたる人が住でいた。