轻松读懂日语经典作品
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しょや
初夜
山本 周五郎
「週刊朝日春季増刊号」朝日新聞社、1954(昭和29)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,384 字 · 35 页
生理的におくてというのか、幾たびか機会はあったが、いつも不潔感が邪魔をするし、それを押してそこまでゆく気持が起こらない、ただそれだけのことであった。……その夜、湯の山の妓楼に泊ったときも、妓に「いっしょに寝た」と云う約束をさせて、べつの部屋で一人で寝た。こんな嘘はすぐにわかるとみえ、朝になると久良馬はさも軽べつしたような眼で代二郎を見、大きく舌打ちをして云った。
――おれは脇屋が男になるまで此処へ伴れて来るぞ。
代二郎は苦笑しながら黙っていた。
妓楼を出てから、久良馬は「新しい銀札が通用しない」と不審そうに云いだした。はっきり口では云わないが、明らかにその銀札をいやがるふうで、彼は癪に障ったが現銀で払った、というのである。久良馬はいかにも訝しそうであったが、代二郎には理由がほぼわかるので、つい頷きながら呟いた。
――そんなことになると思ったよ。
――それはどういう意味だ。
久良馬は吃驚したように訊いた。
――新銀札には加印がないからさ。
代二郎はそう答えた。この土地では古くから、銀札には必ず領内に住む豪商らの加印があった。つまり表記の金額を藩と連帯で保証する意味であるが、去年の冬に発行したものには加印がなかった。