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きたのしょうじょ

北の少女

小川 未明

「童話文学」1928(昭和3)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,032 字 · 6 页

青空文庫

しかし、しばらくそこを離れていると、なんとなく都へ帰るのがうれしかった。東京にも、たくさんなお友だちがあって、なかには、自分の帰るのを待っていてくれるものもあると思ったからです。

しかし、彼は、ここにいる少女をはじめ、ここへきてお友だちとなった村の子供たちと別れるのが、なにより悲しかったのでした。

「いつ、坊ちゃん帰るんか……。」

「もうじき、帰るの。」

彼女は、このとき、急に、両手を顔にあてて泣き出しました。

「なぜ、泣くの?」と、少年は、少女の顔をのぞきこんだ。けれど、彼女は、だまっていました。泣く声は、だんだん小さくなりました。しまいにはむせぴ声となり、いつしか、それは、波の音に消されてしまいました。

「ねえ、僕帰ったら、手紙をおくれよ。僕もあげるから。」と、少年は、彼女が、やっと顔をあげたときに、いったのでした。

「わたし、字を知らないのだもの……。」

彼女は、はずかしそうに、こういって、また下を向いたのです。

「学校へいかなかったのかい?」

少年は、こう問うと、少女は、顔を赤くしながら、うなずきました。

彼は、東京へ帰ったら、ここへきて、いちばん先にお友だちとなったこの少女へ、手紙を出そうと思ったのも、むなしくなったのを残念に思いました。