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きたのしょうじょ
北の少女
小川 未明
「童話文学」1928(昭和3)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,032 字 · 6 页
夏の夕暮れの景色などを思い出して、いろいろ空想したにすぎなかった。そして、いつしか秋となり、早くも木枯らしが吹くころになると、まもなく吹雪にみまわれなければならぬ、この北の風の叫ぶ森や、砂浜などを目にさびしく描いたのでした。
「いまごろ、あのあたりはどんなだろう?」
それこそ、ものすごい水平線の上を、黒い海坊主が、大またに歩いているかもしれぬと思われたのです。
しかし、それも、いつしか過去の夢とうすれ、消えてゆく日がありました。
ある夏の日の午後のことでありました。小さな弟が、玄関に立って、なにか売りにきたものを断っていました。
「いらない……、いらない……、いらない!」
けれど、売りにきたものは、なかなか帰ろうとしないようすでした。小さな弟は、耳のあたりを赤くして、外の方をじっと見つめています。
このようすを見たとき、彼は、なんだろうと、弟のそばへいって、外をのぞいたのでありました。怪しげなふうをした、田舎娘が、短い着物に、かさをかぶって、かごのようなものをかついでいましたが、そのときは、女はこちらを見ずに、子細ありげに庭さきの垣根の下を見つめて立っていました。