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るそんのつぼ

呂宋の壺

久生 十蘭

「オール讀物」1957(昭和32)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,375 字 · 36 页

青空文庫

夜は岸で野営をするので、半月がかりの辛い旅になる。

吉之丞はマウバンを発ったのが、十月十二日で、十一月の二日にサンミゲルに着いた。なるほど日本人は住んでいたが、摂津の沖から吹き流されて漂着した漁師原で、助左衛門とは縁もゆかりもない男たちであった。

サンミゲルまで来たついでに、そこからまた南へ下ってミンダナオ島に行き、カガヤンの町で助左衛門の消息をたずねたが、なんの得るところもなかった。そんなことをしているうちに、その年も暮れた。

翌年の五月ごろまで、なすこともなくマニラの宿で日を消していたが、助左衛門の捜索をあきらめたのでも、やめたのでもなかった。この旅亭は日本人の定宿のようになっているので、ここに居据っていれば、新入の日本人から、助左衛門の踪跡を聞きだす便宜があると思ったからである。

六月の末、角倉の御朱印船が着いたが、沖繋りしたまま、人も貨物もあげない。宿のあるじに聞くと、日本人の吉利支丹の癩者が百三十人も乗っているので、入港を許可するかしないかで、むずかしい掛合になっているということであった。

角倉の船は入港を許可しないことになって、翌日の夕方、乗客が二人だけサンパンで送られてきた。